BGMのおはなし
ものごとを自分に習慣付けることって、実はものすごく難しいことなのでは、とふと思いつく。わたしは自分を拘束するのがとてもとても嫌だから、気を抜くとすぐ不定期と偶然に象られたなんとも怠惰な生活に陥ってしまう。
たとえば、毎日の保湿用に買ったクリームは缶の半分を残して冬の終わりを迎え、冷蔵庫には使い切れずに賞味期限を迎えた調味料がかわいそうに放って置かれている。
そんなわたしだけれど、ひとつだけ、もう、無意識に日常の中に求めるものがある。それが、BGMだ。
いつから、なんてもう思い出せないほどに、それは確実にわたしの生活のひとつのピースとなっている。CDラジカセで初めて聞いたのは大塚愛ちゃんの『さくらんぼ』だったっけ。お父さんが買ってきてくれた、家族のじゃない、はじめてのわたしだけのCD。
それ以来、いままでずっとわたしは音楽を流し続けている。影と同じくらいに、いつもわたしの傍にいて、それは常に私の背後で歌っていた。桜が咲けば森山直太朗を聞いたし、夏には蝉の声に負けないようにゆずを歌った。彼氏ができた日に、浮かれて流したのはYUIの『CHE.R.RY』だった。
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最近は、できることが少なくなって、出かけることも減って、こころが勝手にこぼれていくのを止められずにいる。けれど、ちっぽけな電子機器から流れる音の粒子たちは、わたしの鼓膜から胸に届き、流れ出てしまったこころの穴を埋めてくれている。それはわたしの生活の、ひとよりうんと少ない、けれど大切な、大切な彩りなのだ。
aikoちゃんの『カブトムシ』を聞きながら、ふとそんなことを思った。